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指 定 |
所在地 |
管理者 |
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昭和59.2.17 市指定 |
小浜市酒井 |
日蓮宗長源寺 |
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この経箱は黒漆地に沈金の文様が施こされた被せ蓋式の二段箱で、大きさは縦35.6p×横22.2p、高さ14.8pである。経箱は本来、経典を納めるための箱であり、その装飾には仏教に因んだ図柄がよく用いられる。
なかでもこの経箱は室町時代に日本で作られながら、蓋表に見られる蓮華荷葉(蓮の咲く池)や流水、湧雲には中国の絵画様式が多分に取り入れられている。これは中国の宋・元代(10〜14世紀)に流行した沈金(中国では鎗金と言う)技法がこの経箱に用いられているためで、この技法が日本に伝わり、和様化されはじめる頃の作と考えられる。
沈金とは一般に、塗り重ねた漆の表面に刀で線状の文様を彫り、その線の中に金箔・金粉を漆で擦りこんで図柄を表わす技法を言うが、この時代の作例はきわめて珍しいとされる。
この経箱に納められていた経巻は同寺の『當山宝蔵什物下書』によれば、「金(紺)紙金泥折本 壱部(八巻)書写主浄行院日俊、但シ箱ハ蓮乃平蒔ニ而 掛子二ツ」と記すものと思われ、同寺に伝来する寛永7年(1630)日俊書写の法華経奥書に符合する所から、江戸初期にはこの経巻が納められていたことをうかがうことができる。
ともあれこの経箱は、長い年月を経て漆の色もくすんで見えるが、蓋の陰にかくれた輪宝(法具)文様の沈金線は今だに輝きを失わず、当初の美しかったであろう意匠を彷彿とさせる。
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